教えのやさしい解説

大白法 709号
 
実乗の一善(じつじょうのいちぜん)
 実乗とは
 実乗とは、実大乗教の略で法華経のことをいいます。法華経は真実の一仏乗を説くので実乗というのです。
 「実乗」の「実」とは、真実で偽(いつわ)りのない「まこと」ということ。「乗」とは、乗り物、すなわち人を乗せて幸せなところへ運んでいく乗り物で、教えをいいます。
 この実乗に対して、一時的な権(か)りの教えとしての方便があります。釈尊は無量義経において、
 「諸(もろもろ)の衆生の性欲不同(しょうよく ふどう)なることを知れり。性欲不同なれば種種に法を説きき。種種に法を説くこと、方便力を以てす」(法華経 二三n)
と、華厳(けごん)・阿含(あごん)・方等(ほうどう)・般若(はんにゃ)等の四十余年の諸経は、衆生の機根を調養(ちょうよう)するための方便経であると説かれました。
 そして法華経に、
 「正直捨方便 但説無上道(正直に方便を捨てて 但無上道を説く)」(同一二四n)
と示されるように、釈尊はこうした方便の権経を正直に、素直に捨てて、法華経という真実の無上道を説かれました。
 そして仏と同じように、一切衆生も正直に法華経に帰依(きえ)すべきことを説かれたのです。

 実乗の一善
 日蓮大聖人は『立正安国論』において、国土に起こる飢饉(ききん)や疫病(えきびょう)、天変地夭(てんぺん ちよう)などの原因が、世の多くの人々が正法(しょうぼう)に背(そむ)き悪法に帰(き)すが故であることを示され、国中に蔓延(はびこ)る謗法を退治し、正法に帰依しなければならないことを仰せられました。
 そして具体的には、諸宗悪法の最たるものとして、当時、盛(さか)んに信仰されていた法然(ほうねん)の浄土宗を破折され、
 「汝早く信仰の寸心を改めて速(すみ)やかに実乗の一善に帰せよ」(御書 二五〇n)
と仰せられ、世の中の混乱を鎮(しず)め、幸福な境界を築くには、何をおいてもまず謗法を信ずる心を改めて、法華経の「実乗の一善」に帰依すべきことを示されました。

 実乗の一善の元意
 このように『立正安国論』では、一往、法然・浄土宗への破邪に対する法華の顕正(けんしょう)として、権実相対(ごんじつそうたい)の上から破折されていますが、ここに示された実乗の元意(がんい)を探(さぐ)れば、本迹(ほんじゃく)相対、種脱(しゅだつ)相対して、本門下種の教法こそが実乗の一善となります。
 その本門下種の教法とは、釈尊が『神力品』において地涌(じゆ)上行に結要(けっちょう)付嘱されたところの法体(ほったい)であり、大聖人は、その法体を『当体義抄』『総勘文抄』等において、久遠元初(がんじょ)の仏法の本源の悟りとして示されています。

 立正安国・実乗の一善に帰せよ
 総本山第二十六世日寛(にちかん)上人は『立正安国論愚記』に、
 「『実乗に帰せよ』とは即ち是れ立正なり」(御書文段 四九n)
と、「実乗の一善に帰依せよ」とは、正しい仏法を世に立てていくことであると示されています。そしてその実体は、
 「立正の両字は三箇(さんか)の秘法を含む」(同 六n)
と仰せのように、三大秘法を世に立てることをいいます。
 すなわち、大聖人が『立正安国論』で「実乗の一善に帰せよ」と師子吼(ししく)された真義は、爾前迹門(にぜんしゃくもん)の邪法邪師の邪義を捨てて、速やかに久遠元初の下種の法体である「本門の本尊」「本門の戒壇」「本門の題目」の三大秘法の正法に帰依すべきところにあるのです。
 「立正安国」とは、この実乗の一善である三大秘法のもとに、日蓮正宗の仏法を広宣流布していく大功徳により、私たちの住むこの世界を、御本仏の功徳に包まれた仏国土と変革していくことです。悪徳、悪人、謗法充満のこの世法にあって、己(おのれ)の命、心を、御本仏への絶対帰依心に変えて、広宣流布のために破邪顕正の闘いを実践していくことによって「安国」が実現され、また己自身の安心も家庭の安泰も築かれていくのです。
 大聖人は『立正安国論』に、
 「如(し)かず彼の万祈(ばんき)を修せんよりは此の一凶を禁ぜんには」(御書 二四一n)
と仰せです。
 創価学会の三宝破壊の大謗法による害毒は、今や全世界に蔓延し、それが近年のあらゆる災難の原因となっています。したがって、創価学会という「現在の一凶」 への徹底した破折こそが、最も時に適った折伏と言えるのです。

 まとめ
  大聖人は、『立正安国論』の最後に、
 「唯我が信ずるのみに非ず、又他の誤りをも誡(いまし)めんのみ」(同 二五〇n)
と仰せです。二年後には『立正安国論』 正義顕揚七百五十年の大佳節がやってきます。
 「正義を顕揚する」とは、まさに折伏の実践であり、安国も、個人・家庭の安穏も、この折伏によって始まります。
 私たちの日々の折伏実践は、まさに実乗の一善である本門戒壇の大御本尊のもとに、個々の人々を救い、ひいては社会全体を仏国土へと変革する尊い修行であり、また莫大な功徳を成ずることを確信し、平成二十一年の大佳節に向けて精進してまいりましょう。